フィルムは記録する

鹿島槍ヶ岳と下廊下

登山家の冠松次郎を指導者として文部省で製作された山岳記録映画の1本。1930年8月に行われた、北アルプス(飛騨山脈)の北部、黒部川東側に連なる後立山連峰で富山県と長野県にまたがる鹿島槍ヶ岳の東尾根の登攀と、黒部川の下廊下(下ノ廊下)の探訪を綴ってゆく。山岳撮影で経験を積んでいた白井茂のカメラは本作でも冴えており、壮大で美しくまた過酷でもある大自然とその中を進む登山隊の活動を見事にフィルムに収めている。川の対岸まで綱を張って即席の籠を作って人を渡す「籠渡し」の場面はひとつの見どころだろう。

作品詳細

作品番号
ST000263
映画題名
鹿島槍ヶ岳と下廊下
映画題名ヨミ
カシマヤリガタケトシモノロウカ
製作年月日
1930
時間(分)
24
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
文部省
配給会社
文部省
配給年月日
1930.10.[頒布]
スタッフ
冠松次郎[指導]白井茂[撮影]薮下泰次[撮影]渡辺漸、小平不二雄、西岡洋一
検閲番号等
1930年11月4日
E13883、日、實、風、鹿島檢ケ丘(槍ヶ岳の誤植か)と下廊下、2巻、502m、文部省(製作者、申請者とも)免
フィルム映写速度
18
備考
元素材は、1971年度に文部省より管理換された35㎜不燃性マスターポジフィルム。
検閲時報の記載と比べると、元素材である上述のフィルムの尺長は501.103mでほぼ同じである。
スタッフ名は参考文献(『「岳人冠松次郎と学芸官中田俊造―戦前期における文部省山岳映画―」展示解説書』)による。
参考文献
「活動寫眞「フイルム」頒布」(『官報』第一一三九號、1930年10月14日)366頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/2957606/1/12
文部省社會敎育局編『文部省敎育映畫時報 4 昭和六年二月』(1931年)60頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1148960/1/33
文部省『敎育映畫硏究資料 第十八輯 本邦映畫敎育の發達』(1938年)「文部省製作映畫年度別」69頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1451797/1/39
白井茂『カメラと人生―白井茂回顧録―』(ユニ通信社、1983年)58-60頁
『北区飛鳥山博物館特別展 岳人冠松次郎 その生涯とアルピニズム』(北区飛鳥山博物館、2000年)31頁
『「岳人冠松次郎と学芸官中田俊造―戦前期における文部省山岳映画―」展示解説書』(北区飛鳥山博物館、2014年)44-52頁、62頁、71-72頁