昭和二年 特別大演習
1927年11月に愛知県で行われた陸軍特別大演習の記録で『昭和二年度 陸軍特別大演習 名古屋地方』(ST000091)および『陸軍特別大演習 第壹報』(ST000092)と同じ題材である。本作では、昭和天皇の名古屋到着、城北練兵場親閲、野外統監、演習の戦線巡視、戦闘機による演習などから構成されており、終わりの方に11月19日に行われた観兵式の模様が収められている。元素材ではメインタイトルとほぼ同じデザインのまま、「特別大演習」の文字が「觀兵式当日の実况」となったタイトルが観兵式の場面の前に出ることから、同じ製作会社の別作品がつなげられた可能性が考えられるが、元素材に残る検閲番号に該当する検閲記録と尺長がほほ同じであることからここでは1本の作品として扱っている。なお、『昭和二年 觀兵式当日の実况』に該当する可能性のある作品の検閲記録は確認できていない。この観兵式ではひとりの兵士が天皇に直訴しようとした「事件」が発生しており(参考文献『昭和二年陸軍特別大演習竝地方行幸愛知縣記録』664-665頁、『昭和史探索 一九二六―一九四五 1』『昭和天皇実録 第四』)、当時その事件が公開に影響した可能性も考えられよう。なお、参考文献(『昭和二年陸軍特別大演習竝地方行幸愛知縣記録』364-368頁)によれば、加々村映画製作社以外でこの演習を映画に撮影した会社・団体は以下のとおりである。日本電報通信社、東京太平寫眞通信社、岩岡商會、櫻映畫製作所、日本活動寫眞株式会社、大阪朝日新聞社、服部プロダクション、帝國敎育映畫製作所、丸五キネマ製作所、參陽新報社、岩田映畫製作所、軍事敎育劇太陽團。
作品詳細
- 作品番号
- ST000255
- 映画題名
- 昭和二年 特別大演習
- 映画題名ヨミ
- ショウワニネントクベツダイエンシュウ
- 製作年月日
- 1927-1931
- 時間(分)
- 14
- サウンド
- サイレント
- カラーの種類
- 白黒
- 製作会社
- 加々村映画製作社
- スタッフ
- 加々村映画製作社(名古屋市中区城代町)[謹写]參謀本部[認定]加々村留吉、淺岡一男、鈴木郁三、吉田稲彦
- 検閲番号等
- 元素材には検閲番号の穿孔跡があり、以下の検閲時報の記録と合致する。
1931年9月28日
F10824、日、實、時事、昭和二年特別大習演(演習の誤植と思われる)、1巻、288m、日本フイルム製作所(製作者)、陸軍省新聞班(申請者)、免
参考文献(『日本映画事業総覧』)により、加々村映画製作社は日本キネマ製作所に社名変更したと考えられることから、上記記録の製作者「日本フイルム製作所」は誤記と思われる。
なお、撮影時期に近い1927年には「加々村留吉」を製作者とする以下の記録がある。
1927年11月28日
B14525、日、實、時事、陸軍大演習、1卷、133m、加々村留吉(製作者)、駒田萬次郎(申請者)、新 - フィルム映写速度
- 18
- 備考
- 元素材は、1969年度にアメリカ議会図書館より返還された35㎜可燃性ポジフィルムを不燃化した35㎜デュープネガ。
検閲時報の記載と比べると、元素材である上述のフィルムの尺長は288.365mでほぼ同じである。
製作年について、撮影は1927年だが、検閲記録から元素材を1931年完成版とみなして「1927-1931」とした。
加々村留吉以外のスタッフ欄の個人名は参考文献(『昭和二年陸軍特別大演習竝地方行幸愛知縣記録』367頁)による。 - 参考文献
- 『昭和二年陸軍特別大演習竝地方行幸愛知縣記録』(愛知県、1929年)
「第二章 總務部/第三節 新聞記者/第二項 陪觀記者」364-368頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1452971/1/285
「第三章 兵務部/第三節 聖上陛下御行動の一般」654-670頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1452971/1/477
市川彩『日本映畫事業總覽 昭和五年版』(國際映畫通信社、1930年)486頁( 国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1225247/1/282
半藤一利[編著]『昭和史探索 一九二六―一九四五 1』(ちくま文庫、2006年)111-130頁
『昭和天皇実録 第四』(東京書籍、2015年)818-819頁