フィルムは記録する

セルロイドの話

日用品や人形など玩具の素材として重宝され、可燃性フィルムのフィルムベース素材としても使われたセルロイドの製造工程とその用途を見せる通俗科学映画で、参考文献(『キネマ旬報』)によれば「東日大毎科學映畫シリーズ第二篇」とある。大日本セルロイド(現・ダイセル)の写真フィルム事業部は1934年に独立して富士寫眞フイルム(現・富士フイルム)が設立されており、本作では映画フィルムについては扱われていない。綿花を取った綿の種子から採取される短繊維のリンターと木綿屑に硝酸と硫酸の混酸を加えて硝化させ、余分の酸を除いて蒸気洗いと水洗いを重ねた上で、水分を除いてできた硝化綿(ニトロセルロース)に可塑剤となる樟脳とアルコールを加えるとセルロイドができる。樟脳の原料となるクスノキの世界的産出国である台湾を統治していた日本は、本作製作当時世界一のセルロイド生産国となっていた。後半では人形の製造工場の様子が紹介される。参考文献(『文化映画』)によれば、富士寫眞フイルムが開設した富士スタヂオは「東日・大毎の文化映畫の撮影現像錄音を主として引き受けてゐる」とある。なお、検閲番号の記載されたメインタイトルは戦後につけられたものと考えられる。

作品詳細

作品番号
ST000242
映画題名
セルロイドの話
映画題名ヨミ
セルロイドノハナシ
製作年月日
1938
時間(分)
17
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
東京日日新聞社、大阪毎日新聞社
配給会社
東京日日新聞社、大阪毎日新聞社
スタッフ
大日本セルロイド株式会社[企画]富士スタヂオ[撮影・録音・現像]
検閲番号等
以下の検閲記録から、本作は当初トーキー版が製作され、のちにサイレント版も製作されたと考えられる。「發」がトーキー版を表す。
1938年9月20日
自M31256至M31261、日、實、宣、産、發、セルロイドの話、2巻、416m、東日(製作者、申請者とも)、自免至免
1938年10月13日
M34555、日、實、宣、産、發、[一六ミリ]セルロイドの話、1巻、294m、東日(製作者、申請者とも)、免
1938年11月25日
M41284、日、實、宣、産、(「發」の記載がない)、セルロイドの話、2巻、501m、東日(製作者、申請者とも)、免
自M41285至M41298、日、實、宣、産、(「發」の記載がない)、[一六ミリ]セルロイドの話、1巻、195m、東日(製作者、申請者とも)、免
元素材のメインタイトル下部に「M-1338」の表記があり、これは国会図書館憲政資料室にマイクロフィッシュで所蔵されている、以下の1947年1月16日のGHQの検閲記録と合致する。
125. Seruroido no hanashi, Daimai & Tonichi (PROD.), Monbusho(OWNER), 2 (REELS), Pass, M 1.338, Jan 16 '47
(A LIST of MOTION PICTURES and LANTERN SLIDES, Censored by PPB DISTRICT STATION I, Tokyo, during 2 January 1947 to 30 January 1947, Supplement IV, p. 12)
国会図書館資料タイトル:A Master List of Motion Pictures and Lantern Slides Censored by PPB District Station I, Tokyo (October 1945 to 30 September 1946), Revised, 10 December 1946
国立国会図書館請求記号:CIS 02814
国立国会図書館書誌ID:000006822830
フィルム映写速度
24
備考
元素材は、国立映画アーカイブが所蔵する16mmポジフィルム。
検閲時報の記載(自M41285至M41298)と比べると、元素材の尺長は186.928mで8mほど短い。
製作年は参考文献(『大日本セルロイド株式會社史』)による。
参考文献
「短篇映画」(『キネマ旬報』第662號、1938年)80頁
「優秀サービス・ステーション 富士スタヂオ」(『文化映画』第二卷第一號、1939年)76頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/4420268/1/44
「文部省認定 文化映畫分類別解説總覽 8理化學/セルロイドの話」(中山浩[編]『日本文化映画年鑑 昭和15年版』文化日本社、1940年)207頁(国立国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1871710/1/132
「第四章 躍進の時代(昭和十―十四年)」(『大日本セルロイド株式會社史』大日本セルロイド株式會社、1952年)175頁
板倉史朗「占領期におけるGHQのフィルム検閲―所蔵フィルムから読み解く認証番号の意味」(『東京国立近代美術館研究紀要』東京国立近代美術館、2012年)54-60頁(東京国立近代美術館リポジトリ)https://momat.repo.nii.ac.jp/records/55