フィルムは記録する

山口の卷

山口県各地の名所旧跡や建築物を見学者が訪れるという形式で紹介する作品。本作が謹呈された「田中大將閣下」は萩出身の陸軍大将で総理大臣も務めた田中義一である。山口市の県庁本庁舎、県会議事堂、瓦葺の公会堂と県立教育博物館、亀山公園の後、防府に移って毛利侯爵邸と防府天満宮、そして「岩國の卷」の字幕が入って錦帯橋が映し出される。最後は下関の乃木神社に参拝と見学に訪れた報濟少青年團と復元された乃木旧邸が紹介され、「第一卷終」のタイトルとともに終わる。

作品詳細

作品番号
ST000238
映画題名
山口の卷
映画題名ヨミ
ヤマグチノマキ
製作年月日
1925
時間(分)
11
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
大日本報濟會
スタッフ
藤津良蔵
フィルム映写速度
16
備考
元素材は、2006年度に萩博物館所蔵の35mm可燃性ポジフィルムより不燃化した35㎜インターネガより作製した35㎜上映用ポジフィルム。
本作の題名は冒頭に出るタイトルに準じたが、元素材作製に使用した萩博物館所蔵の35mmフィルムのフィルム缶の缶表には「山口縣(抄)」の記載があり、内容も岩国や下関も含むことから、本作は「山口縣」を題名とした作品の一部だった可能性がある。また、『萩の卷』(ST000236)および『下関』(ST000237)とはその内容からも本作との強い関連性が窺われる。
参考文献の各記述によれば、藤津良藏は山口県出身で藤津總本店を下関で興し、小間物化粧品卸商として成功した当時の多額納税者で、「社會思想善導」のため1922年に「報恩済世」を主義とする大日本報濟會を設立したという。参考文献(『最新業界人事盛衰錄』)に掲載された肖像写真から、報濟少青年團の紹介を含む各場面に登場する恰幅のいい男性が藤津良藏と考えられる。
参考文献
『人事興信錄 第八版』(人事興信所、1928年)フ70頁(国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/2127124/1/1378
中西利八[編]『最新業界人事盛衰錄』(通俗經濟社、1931年)フの部29頁(国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1208651/1/937
深井新之助[編]『下關經濟年表』(深井新之助、1940年)68頁(国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1456780/1/39