フィルムは記録する

萩の卷

1925年4月の鉄道開通による萩駅開設と「毛利輝元公三百年祭」に沸く萩の町の賑わい、それに萩の名所旧跡の数々を紹介する作品。現在も残る萩駅の駅舎前の雑踏と開通式の模様に始まり、萩城址と毛利輝元菩提所、三百年祭に沸く町の様子から毛利家の墓所のある大照院と東光寺へと続く。そして玉木文之進旧宅、松陰神社と境内に残る松下村塾や松陰幽囚の旧宅に加え、誕生地の井戸といった吉田松陰ゆかりの史跡が丁寧に紹介される。伊藤博文旧宅から田中義一陸軍大将邸へと移ると大将自身も登場する。さらに2015年に明治日本の産業革命遺産として世界遺産に登録された萩反射炉と小畑浦、近くの越ケ浜の明神池へとつながり、萩名物として焼物と蜜柑が紹介されたところで「第三巻終」と出て終わる。クレジットはないが、名所旧跡を紹介する構成と中間字幕の書体、田中義一陸軍大将を称える姿勢などは『山口の卷』(ST000238)と共通する。

作品詳細

作品番号
ST000236
映画題名
萩の卷
映画題名ヨミ
ハギノマキ
製作年月日
1925
時間(分)
21
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
大日本報濟會
フィルム映写速度
16
備考
元素材は、2006年度に萩博物館所蔵の35mm可燃性ポジフィルムより不燃化した35㎜インターネガフィルム。
最後に「第三巻終」と出るが、元素材作製に使用した萩博物館所蔵の35mmポジフィルムは2巻で、フィルム缶の缶表には冒頭の字幕タイトルと同じ「萩の卷」の表記があることから本作の題名とし、同じく「大日本報濟會」の表記があることから製作会社とした。
本作と『下關』(ST000237)および『山口の卷』(ST000238)はいずれも山口県内各地を紹介するその内容から強い関連性が窺われる。
参考文献の各記述によれば、藤津良藏は山口県出身で藤津總本店を下関で興し、小間物化粧品卸商として成功した当時の多額納税者で、「社會思想善導」のため1922年に「報恩済世」を主義とする大日本報濟會を設立したという。参考文献(『最新業界人事盛衰錄』)に掲載された肖像写真から、各場面に登場する恰幅のいい男性が藤津良藏と考えられる。
参考文献
『人事興信錄 第八版』(人事興信所、1928年)フ70頁(国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/2127124/1/1378
中西利八[編]『最新業界人事盛衰錄』(通俗經濟社、1931年)フの部29頁(国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1208651/1/937
深井新之助[編]『下關經濟年表』(深井新之助、1940年)68頁(国会図書館デジタルコレクション)https://dl.ndl.go.jp/pid/1456780/1/39