フィルムは記録する

新興満洲國

大連で発行されていた日本語の日刊新聞「満洲日報」が1932年3月1日の満洲国建国宣言前後に奉天、長春、吉林の市街と各種施設の紹介に加え、奉天の満洲国建設運動、長春における溥儀執政就任の実況と新国家建設祝賀行列、吉林と敦化を結ぶ鉄道沿線の風景や地場産業、さらに盗賊化した兵隊である兵匪に対処する警察隊の活躍などをまとめた記録。満洲日報は1907年に創刊された満洲日日新聞のこの時期の紙名で、本作には奉天支社の建物と社員らしき人々も映し出される。また、愛新覚羅溥儀の満洲国執政就任式の模様は『建国の春』(ST000129)で詳細に記録されているが、同作で長春に到着した溥儀が列車から降りるカットに映り込んだ手持ち撮影機の男性は本作の撮影者のひとりである可能性がある。本作では走行する自動車や列車内から窓外を捉えたカットが多用されているが、手持ちで撮影されたと考えられるほとんど映像は満洲日報記者の手になるものとみられ、元素材のコンディションも含めて決して見やすい画面とはいえない。また、溥儀の執政就任と祝賀行列の場面が2つに分かれているなど元素材の編集状態には疑問もあるが、そのままの形で公開する。

作品詳細

作品番号
ST000229
映画題名
新興満洲國
映画題名ヨミ
シンコウマンシュウコク
製作年月日
1932
時間(分)
73
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
滿洲日報社
検閲番号等
1932年4月26日
G6330、日、實、時事、新興滿洲國、6巻、1339m、滿洲日報社(製作者、申請者とも)、新
元素材には検閲番号の穿孔跡があり、以下の検閲時報の記録と合致する。
1932年5月11日
G7172、日、實、時事、新興滿洲國、7巻、1340m、滿洲日報社(製作者、申請者とも)、免
2つの検閲記録は同一作品とみられるが巻数が異なっている。
フィルム映写速度
16
備考
元素材は、2005年度に受贈した35㎜可燃性ポジフィルムを不燃化した35mmインターネガフィルムより作製した35㎜上映用ポジフィルム。
検閲時報の記載と比べると、元素材である上述のフィルムの尺長は1339.94mであることから、完全版であると考えられる。
参考文献(満洲日報)によれば、1932年3月18日に大連の満洲日報本社講堂で開催された「新興滿洲國 映畫と公演の夕」での『新興滿洲國』3巻が初上映と考えられる。同月26日には同所で「新興滿洲國映畫の夕」が開催され『産業の滿洲國側面』全1巻も併せて上映された。4月に各地で開催された「讀者慰安映畫會」では満洲日報撮影として『兵匪』1巻、『滿洲國建國式』3巻、『滿洲國の産業側面』2巻が上映(満鉄鉄道部撮影の『遼西の掃匪』5巻を同時上映)されており、元素材の最後に兵匪に対処する鉄嶺警察隊出動を描いた場面があることから、元素材はこれらを再編集した作品だった可能性が考えられる。
参考文献(東京朝日新聞)には、五一五事件発生前日の1932年5月14日に東京日本橋の白木屋百貨店で開幕した満洲日報社主催の「大滿洲國展覽會」の広告がある。広告には16日の白木屋7階ホールでの「講演と映畫の會」の告知があり、検閲記録と併せると本作が同会で上映された可能性が考えられる。
参考文献
滿洲日報(1932年3月17日付)7面
滿洲日報(1932年3月18日付)1面
滿洲日報(1932年3月26日付)7面
滿洲日報(1932年4月6日付)4面(滿日各地版)
東京朝日新聞(1932年5月14日発行15日付夕刊)2面広告