朝日は輝く[抜萃]
1879年に大阪で第1号を発行した朝日新聞が創刊50周年を記念し、日活に製作を委嘱して溝口健二と伊奈精一が共同で監督にあたった長篇劇映画『朝日は輝く』から、新聞社内の概要や新聞製作の過程を描いた場面を中心に抜き出して再構成した抜粋版で、劇映画のダイジェストというよりは新聞事業を紹介する文化映画的な作品になっている。中野英治と村田宏壽が演じる二人の新人記者の活躍を描いて「宣傳映畫としては上々の活劇」(池田重近)と評された元の劇映画の要素が完全に払拭されているわけではなく、二人の俳優の一部出演場面とともに汽船の火災事故という物語のクライマックスの設定が活かされている。事件の第一報を受けて飛行機やモーターボートを駆使して現場に急行した記者たちの決死の取材記事は、伝書鳩や電話などの通信手段で新聞社に送られる。届いた記事は活字に組まれ、紙版を経て鋳造された鉛版が輪転機にセットされ、最後に印刷された新聞が各地に送られてゆくまでがテンポよくまとめられている。実際の大阪朝日新聞社内の光景に加え、同社の旧社屋や初代通天閣を捉えた空撮場面のほか、帝国議事堂(国会議事堂)が完成するまで現在の経済産業省の敷地にあった第三次仮議事堂をはじめとする実写の挿入映像にも興味深いものがある。なお、エンドは欠落している。
作品詳細
- 作品番号
- ST000305
- 映画題名
- 朝日は輝く[抜萃]
- 映画題名ヨミ
- アサヒハカガヤク[バッスイ]
- 製作年月日
- 1929
- 時間(分)
- 28
- サウンド
- サイレント
- カラーの種類
- 白黒
- 製作会社
- 大阪朝日新聞社、日本活動寫眞株式会社
- スタッフ
- 溝口健二、伊奈精一[監督]横田達之、対馬寅雄[撮影]中野英治、村田宏壽、田中春男[出演]
- 検閲番号等
- 1929年6月22日
D7253、日、實、宣、産、朝日は輝く拔萃、2巻、536m、大阪朝日新聞社(製作者)、東京朝日新聞社(申請者)、新
元素材には検閲番号の穿孔跡があり、以下の検閲時報の記録と合致する。
1932年9月9日
G13556、日、實、宣、産、正、朝日は輝く拔萃、2巻、530m、大阪朝日新聞社(製作者、申請者とも)、新
なお、元素材には上記「G13556」以外に、書体が少し異なるほか、通常は数字の前後に入る「●」が無い「G12」という穿孔跡が元素材の1巻目と2巻目の最初の方にそれぞれ残っているが、該当する検閲記録は確認できていない。 - フィルム映写速度
- 16
- 備考
- 元素材は、2002年度にロシア・ゴスフィルモフォンドより入手した35㎜不燃性ポジフィルム。
検閲時報の記載(G13556)と比べると、元素材である上述のフィルムの尺長は512.39mで約18m短い。
題名について、元素材が本編である長編劇映画『朝日は輝く』の断片素材ではないと検閲記録から確認されたため「抜萃」を付した。
なお、長編劇映画『朝日は輝く』の尺長について、大阪朝日新聞社を製作者、東京朝日新聞社を申請者とする1929年3月25日の検閲記録は10巻で、フィルム1箇所(画と字幕で計14m)の切除と説明台本2箇所の抹消という制限が加えられているが、これが2日後の3月27日に大阪の朝日会館で行われた試写会で上映されたと考えられる。その後、同じ製作者と申請者による検閲記録は4月1日に1件、5月3日には題名を『朝日は輝く A篇』とした9件がいずれも10巻で申請されている。一方、4月12日に浅草富士館ほかで公開された『朝日は輝く』の巻数は『キネマ旬報』の池田重近による批評記事に記載された10巻ではなく、直前の4月6日および10日~12日に製作者、申請者とも日本活動写真株式会社(日活)名義で合計12件の検閲記録が残る8巻だった可能性があることから、巻数が異なる朝日新聞社版(10巻版)と日活版(8巻版)の2つが存在していたことになる。ちなみに4月22日には日活を製作者、東京朝日新聞社を申請者とする『朝日は輝く プロローグ』(1巻)の4件の検閲記録も残る。 - 参考文献
- 「本紙創刊五十周年記念映畫『朝日は輝く』 明日名士千七百名を招待して朝日會館で封切り」(『大阪朝日新聞』1929年3月26日付)5面
「朝日會舘/今日 本社映畫「朝日は輝く」招待會・豫告 映畫の夕」(『大阪朝日新聞』1929年3月27日付)5面
『大阪朝日新聞』(1929年3月28日付)5面
「『朝日は輝く』 昨夜試写會 名士千六百名を招待し」
「朝日會舘/映畫の夕」
「朝日は輝く 昨夜の映畫夕」(『大阪朝日新聞』1929年3月29日付)13面
編輯部「各社近作 日本映画紹介/朝日は輝く」(『キネマ旬報』第三百二十七號、1929年4月11日)78頁
池田重近「主要日本映画批評/朝日は輝く」(『キネマ旬報』第三百二十九號、1929年5月1日)88頁
佐相勉『溝口健二全作品解説 6』(近代文芸社、2009年)5-34頁
「国会議事堂ができるまで」(本の万華鏡)https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/28/1.html