フィルムは記録する

九條武子夫人の遺影

本作は、歌人としてまた女子教育への取り組みや慈善活動と社会事業への貢献で知られ、大正三美人のひとりとも称された九條武子の没後に、故人を追悼するためにまとめられたと考えられる。西本願寺の家紋と武子の法名「嚴淨院釋尼鏡照」の字幕の後の映像は、参考文献に挙げた、築地本願寺デジタルアーカイブで全篇が公開されている、西本願寺による関東大震災後の救護活動を記録した作品の一部とほぼ完全に重なり、本作最後の中間字幕「ありし日の栄光よ。それは…」もそれに含まれている。本作はエンドが欠落していることもあり作品の全体像は不明である。

作品詳細

作品番号
ST000228
映画題名
九條武子夫人の遺影
映画題名ヨミ
クジョウタケコフジンノイエイ
製作年月日
1928
時間(分)
2
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
フィルム映写速度
16
備考
元素材は、1997年度に横須賀市教育研究所より受贈した35㎜可燃性ネガフィルムより作製した35㎜不燃性上映用ポジフィルム。
九條武子は西本願寺に生まれ、九條良致男爵に嫁いでイギリスを訪れた折に同国の社会事業を視察するなど早くから社会事業に関心を持っていたが、自身も被災した関東大震災の直後から手掛けた救護活動には自らの命を削るほどの心血を注ぎ、没後に病院へと発展する日比谷診療所や震災孤児や若年女子のための六華園を創設した。
本作冒頭の字幕「九條武子夫人の遺影」に続く武子の肖像写真は、参考文献(『九條武子夫人遺芳展―京都女子大学架蔵 九條武子夫人関係コレクション』)に掲載された、1928年1月の「最後の撮影」とされる写真の一部と同じものとみられるため、写真の説明なのかメインタイトルかは定かではないが、ここでは本作の題名とした。
九條武子の生涯を扱った作品として伝記映画『九條武子夫人 無憂華』(1930年、根津新、後藤岱山共同監督、東亜キネマ)がある。
参考文献
友久久雄「浄土真宗における社会活動の基礎的研究Ⅰ―歴史・現状・課題―」(『佛教文化研究所紀要』第46集、龍谷大学仏教文化研究所、2007年)161-180頁
京都女子大学[編]『九條武子夫人遺芳展―京都女子大学架蔵 九條武子夫人関係コレクション』(京都女子大学、2015年)17頁
辻岡健志「関東大震災と築地本願寺の復興」(『浄土真宗総合研究』第11号、浄土真宗本願寺派総合研究所、2017年)17-40頁
「関東大震災記録映像」(築地本願寺デジタルアーカイブ)https://adeac.jp/tsukijihongwanji-arch