フィルムは記録する

史劇 楠公訣別[デジタル復元版]

1921年の「活動写真展覧会」において、”日本映画最初のスター“尾上松之助の一派が摂政宮(後の昭和天皇)の御前で実演した「桜井の別れ」の記録。鎌倉幕府の打倒を目指す後醍醐天皇を支持する楠木正成(尾上松之助)が、勝ち目のないことを知りながら「湊川の戦い」に赴くにあたり、「桜井の駅」で我が子の楠木正行(尾上松葉)に意志を託す場面が演じられている。「活動写真展覧会」は文部省主催により湯島聖堂内にあった東京博物館(現・東京国立博物館および国立科学博物館)を会場に開催されたもので、映画への社会的評価を向上させる大きなきっかけとなった。本作は同展覧会の記録である『攝政宮殿下活動寫眞展覧會御台覧実况』(ST000035)に繋がれて上映されていた可能性がある。日活株式会社から寄贈された35㎜可燃性オリジナルネガは2010年に映画フィルムとしては2件目の重要文化財に指定された。

作品詳細

作品番号
ST000185
映画題名
史劇 楠公訣別[デジタル復元版]
映画題名ヨミ
シゲキ ナンコウケツベツ[デジタルフクゲンバン]
製作年月日
1921
時間(分)
17
サウンド
サイレント
カラーの種類
白黒
製作会社
日本活動寫眞株式会社
フィルム映写速度
16
備考
元素材は、1996年度に日活株式会社所蔵の35㎜可燃性オリジナルネガより不燃化した35mmマスターポジフィルムから2017年度に作製されたデジタル復元版。なお、35㎜可燃性オリジナル・ネガは2006年度に日活株式会社より受贈した。
監督については以前は池田富保とされていたが、参考文献(『アート・リサーチ Vol. 2』)によれば、小林弥六と辻吉郎の共同監督だった可能性が高い。
参考文献
冨田美香、紙屋牧子、権藤千恵「洛西地域映画史聴き取り調査報告1・小林昌典氏談話」(『アート・リサーチ Vol. 2』立命館大学アート・リサーチセンター、2002年)115-136頁。
板倉史明「『史劇 楠公訣別』重要文化財指定へ」(『NFCニューズレター』第90号、2010年)16頁
板倉史明「『史劇楠公決別』(1921)の可燃性ネガフィルムを同定する」(『東京国立近代美術館研究紀要』東京国立近代美術館、2010年)45-55頁
『昭和天皇実録 巻三』(東京書籍、2015年)536-537頁
(東京国立近代美術館リポジトリ)https://momat.repo.nii.ac.jp/records/64
なお、本作は文化庁の「文化遺産オンライン」でも公開されている。https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/401841