フィルムは記録する

東宮殿下御外遊 實况 大正十年

1921年の皇太子裕仁親王の渡欧を記録した映画のひとつで、前半は英語の中間字幕とともにイギリス、フランス、オランダ、ベルギー各国の訪問の様子が点描され、中盤の「皇太子殿下 御帰朝 大正十年九月三日」のタイトル以降の後半は中間字幕は日本語となって帰朝時の模様が綴られる。参考文献(紙屋牧子)では、前半は大阪毎日新聞がフランスの映画会社ゴーモンに撮影を依頼したもの、後半は日本のスタッフによって制作されたと推論している。帰朝を記録した作品に『皇太子殿下御歸朝 第一卷』(ST000056)および『皇太子殿下御歸朝 大正十年九月三日』(ST000057)があり、東京駅の場面ではこれらの作品と同一と思われるカットが確認できる。

作品詳細

作品番号
ST000217
映画題名
東宮殿下御外遊 實况 大正十年
映画題名ヨミ
トウグウデンカゴガイユウ ジッキョウ タイショウジュウネン
製作年月日
1921
時間(分)
8
サウンド
サイレント
カラーの種類
染色/白黒
フィルム映写速度
16
備考
元素材は、2008年度に髙田準三氏より受贈した35㎜可燃性の染色ポジフィルムを不燃化した35㎜白黒インターネガより作製した染色版35㎜上映用ポジフィルム。この35mmプリントは2018年度の上映企画「発掘された映画たち2018」において上映されている。
髙田準三氏は、1899年神奈川県茅ヶ崎に結核療養所・南湖院を設立した医師でキリスト教徒の髙田畊安の直孫。南湖院では、患者の慰安と地域住民との交流を目的に、毎週土曜日に映画会が催され、院の催事を記録した映画とともに、独自に収集した教育映画や文化・記録映画の上映も行われていたと言われるが、本作もその一本と見られる。
参考文献
『昭和天皇実録 第三』(東京書籍、2015年)121-371頁、448-456頁
紙屋牧子「”皇太子渡欧映画”と尾上松之助――NFC所蔵フィルムにみる大正から昭和にかけての皇室をめぐるメディア戦略」(『東京国立近代美術館研究紀要』東京国立近代美術館、2016年)35-54頁
(東京国立近代美術館リポジトリ)http://id.nii.ac.jp/1659/00000020/